閉塞(へいそく)感が漂うファッション業界で、新しいビジネスモデルの構築に邁進(まいしん)する若手起業家がいる。今までにないサービスや仕組みを生み出し、情熱をエンジンに挑戦を続けている。彼らはどんな未来を思い描いているのか。20~30代の起業家に聞いた。
☆スタイラーCEO 小関翼さん
☆キッズコースター社長兼「ティートトウキョウ」デザイナー 岩田翔さん
☆イロヤ社長兼CEO・大野敬太さん
☆ウツワ代表 ハヤカワ五味さん
☆レリック代表取締役兼CEO・北嶋貴朗さん & CMO兼Co-Founder・江城祐太さん
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スタイラーCEO 小関翼さん
ネットでつなぐ 接客のプロ×消費者

■82年生まれ。東京大学大学院修了後、日英メガバンクに勤務。アマゾンに転職し事業開発を担当した後、15年3月にスタイラーを設立。「スタイラー」のほか、オウンドメディア「スタイラーマグ」を運営する。
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★もっと楽しく
「つながりでファッションを楽しくしたい」。小関翼さん(33)率いるスタイラーは、アパレルショップと消費者をネットでつなぐコミュニケーションプラットホーム「スタイラー」を開発、昨年7月にサービス提供を開始、12月にはスマートフォンアプリをリリースした。消費者が欲しい商品の漠然としたイメージや買い物の悩みを投稿し、参加店のスタッフが返信するSNS(交流サイト)感覚の新サービスだ。SNSの登場でユーザー同士では容易につながれるようになったが、プロとつながるのは実はなかなか難しい。スタイラーはプロによる接客サービスをオンライン上に持ち込み、購買・販売の機会を広げている。
日本では、ファッションを含めたライフスタイル分野でのEC化率はまだまだ低い。その実情を前職のアマゾン時代に目の当たりにした。アマゾン社員はよく自社サービスを利用して買い物するが、服だけは別。多くの社員がネットで情報を集めてオフラインで購入していた。小関さんは元々ファッション好き。さらに東京大学大学院で法律とインターネットについて学んだこともあり「ネットで何かしたい」と考えていたところに、ファッション分野での「コミュニケーションとコマースを融合した仕組み作り」を思いついた。

海外に目をやると、ネット上での接客サービスはすでに発達している。例えば中国のタオバオはチャット機能が前提であり、むしろその機能がないと物が売れない。スタイラーでも「ネット上でコミュニケーションすることで消費者の購買を手助けし、そのコミュニケーション自体が価値となるようなサービスを提供したい」という。
手応えは上々だ。スタイラー経由の販売では、17万円のコートや4万円のスニーカーなど高単価商品が売れている。ファッション分野で主流となりつつあった「安い物はネットで探し、高い物は店頭で買う」という考えを覆した。
★1年で海外へ
設立から1年、今年は攻めの姿勢を強める。まず、約120の参加店を16年末までに600に拡大する。今月下旬からは店員1人につき1アカウント開設できるようにする。今までは1店1アカウントだった。夏以降はスタイラー内に決済機能も付ける予定だ。夏には台湾でオウンドメディア「スタイラーマグ」の北京語版をスタートし、16年後半には越境ECも始める。
もう一つ新たな試みが、4~6日に開くITとファッションの未来を描くイベント「ファッションテック・サミット♯001」だ。トークセッションのほか「未来のファッション」をテーマにしたハッカソンなどを企画する。自身の経験から、こうしたスタートアップハブの必要性を感じていた。新しいアイデアを持っていても「どうしたらいいか分からない」人と様々な専門家をつなげる場を作ることで新しいうねりを生む。「熱い思いを持つ人がまとまった方が社会的なインパクトも与えられると思うんです」